1.90歳の叔母が「早く家に帰りたい」と話す
叔父さん夫婦の介護施設を訪ね、叔母さんの話を聞きました。
叔母さんは90歳。今は介護施設で生活しています。
ところが、施設での暮らしが続くうちに、こんな気持ちを口にするようになりました。
「早く施設を出て、家に帰りたい」
施設に入れば、食事や入浴などの支援を受けられます。家族にとっても、介護を支えてもらえる安心があります。
しかし、実際に暮らしている本人にとっては、思うようにならないこともあるようです。
叔母さんの話を聞くと、施設での生活には、私たちが外から見ただけでは分からない事情があることに気づかされました。
2.お風呂も外出も、自分の思いどおりにはいかない
叔母さんによると、お風呂は2日に1回。そして、外出するにも、親族や親戚が来ないと難しいそうです。
自宅で暮らしていれば、出かけたいときに出かけ、好きな時間にお風呂に入ることもできます。
もちろん、年齢を重ねて介護が必要になると、何でも自分一人でできるとは限りません。
施設でも、入居者の体調や安全、職員の配置などに合わせて生活の予定が組まれます。
それでも、自分の好きなようにできないことが続けば、窮屈に感じることもあるでしょう。
自分の生活なのに、自分で決められることが少ない。
叔母さんの「家に帰りたい」という言葉の背景には、そんな思いもあるのかもしれません。
3.施設の運動会、赤白帽子をかぶって参加する
施設では、季節に合わせた行事も行われています。
この時期には運動会があり、入居者が赤白帽子をかぶって参加するそうです。
90歳の叔母さんも、介護福祉士さんに支えてもらいながら、ゆっくりと体を動かします。
年齢や体の状態に合わせて行事に参加できるのは、施設生活の良いところでしょう。
職員さんの支援を受けながら、ほかの入居者と一緒に楽しめる時間もあります。
ただ、施設に行事があるからといって、毎日の生活がすべて楽しいわけではありません。
行事は時々ありますが、普段の日々は続いていきます。
叔母さんにとっては、運動会に参加することよりも、住み慣れた家で自分らしく過ごすことのほうが、大切なのかもしれません。
4.毎日同じような生活、周囲の音や夜の様子
叔母さんが気になっているのは、生活の変化の少なさだけではありません。
施設には、さまざまな状態の人が一緒に暮らしています。
大きな声で話す人もいれば、夜中に目が覚めて、施設内を歩き回る人もいます。
本人に悪気があるとは限りません。体調や認知機能の変化など、それぞれに事情があるのでしょう。
しかし、周囲の声が気になったり、夜に落ち着いて眠れなかったりすれば、生活の負担になることもあります。
叔母さんは、そんな環境の中で暮らしながら、こう感じているそうです。
「なんだか、私には施設が向いていない」
施設での暮らしが合う人もいれば、なかなかなじめない人もいます。
どちらが正しいということではありません。
安全に生活できることと、本人が心地よく暮らせること。その両方を考える必要があるのだと思います。
5.家に帰りたいという願いを、どう考えるか
では、叔母さんが自宅に帰ることはできるのでしょうか。
実際に帰宅できるかどうかは、体の状態や自宅の環境、食事や身の回りの支援など、さまざまな条件によって変わります。
叔母さんには認知症の疑いもあるため、本人の安全を守ることも大切です。
だからといって、本人の「帰りたい」という気持ちを、最初から無理だと決めつける必要はありません。
まずは、施設の職員さんやケアマネジャーなどに相談し、何が負担になっているのか、どのような暮らしを望んでいるのかを整理することができます。
自宅の状態を確認したうえで、在宅介護の支援を受けられるか検討する方法もあります。
すぐに自宅へ戻ることが難しくても、家族との外出や一時帰宅が可能か相談できるかもしれません。
大切なのは、本人の希望と安全の両方を考え、できる方法を探すことです。
6.介護施設は、入居すれば終わりではない
今回、叔母さんの話を聞いて考えさせられました。
介護施設に入居すれば、介護の問題がすべて解決するわけではありません。
施設には、職員さんの支援を受けながら暮らせる安心があります。
一方で、生活の決まりや周囲の環境に、本人がなじめないこともあります。
入居する前には、どんな施設なのかを確認することが大切です。そして、入居した後も、本人がどんな気持ちで暮らしているのか、話を聞き続ける必要があるのでしょう。
90歳の叔母さんが望んでいるのは、単に施設を出ることだけではなく、自分らしい暮らしを取り戻すことなのかもしれません。
介護で大切なのは、本人の安全を守ること。そして、本人がどんな暮らしを望んでいるのかを忘れないことです。
皆さんは、介護施設での安心と、自宅で暮らす自由について、どう考えますか。

