第1話 「お父さん、もう後期高齢者でしょ!」娘に笑われながら、今年も家族旅行の季節がやってきた。

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旅行計画書を広げながら、笑いが止まらなかった理由

娘が取り出したのは、几帳面にまとめられた旅行計画書だった。行き先、宿泊先、食事処、移動手段——びっしりと書き込まれたその紙を見て、妻と顔を見合わせた。

「ここ、段差が少ないから安心だよ」 「このお宿、エレベーターあるから大丈夫」 「食事も消化に良いものが多いお店にしたから」

娘の口から出てくるのは、そんな言葉ばかり。

思わず私は言った。

「ちょっと待ってくれ。お父さんはまだ年寄りじゃないぞ」

すると娘は、私の顔をまじまじと見つめて、一言。

「……お父さん、見た目がもう年寄りだよ」

妻が吹き出した。

「いや、まだまだ高齢者の入り口くらいのもんだ」と言い返すと、娘は間髪入れずにこう返してきた。

「とっくに後期高齢者でしょ!!」

三人で笑った。リビングに笑い声が響いた。春の午後に、こんなに笑ったのはいつぶりだろうと思いながら、私は温かいお茶をすすった。


娘が「年寄り扱い」するのは、愛情の裏返しだと気づいた

正直に言えば、「後期高齢者」という言葉は、最初は少しだけ胸に刺さった。

でも——娘が段差の少ない宿を選び、エレベーターのある場所を探し、消化の良い食事を調べてくれていたその時間を思うと、胸がじんわりと温かくなった。

年寄り扱いされているのではない。大切にされているのだ。

気づけばそう思えた。

子育てに必死だった頃、仕事に追われていた頃——娘に十分な時間をかけてやれたか、今でも自信はない。それでもこうして、計画書を手に笑顔で会いに来てくれる娘の姿が、何より嬉しかった。


さて、今年はどこへ連れて行ってくれるのか

肝心の旅行先は——まだ内緒だそうだ。

「当日のお楽しみ!」と言って、娘は計画書の一部を折り畳んで隠した。妻も共犯らしく、ニヤニヤしながら「楽しみにしてなさい」と言うだけ。

後期高齢者の私には、その「お楽しみ」を待つ時間もまた、十分すぎるほど幸せな時間だった。

穏やかな季節が、もうすぐそこまで来ている。

桜が散って、新緑が芽吹いて——さあ、どんな景色が待っているのだろう。

父親というのは、いくつになっても、娘に甘えていいものらしい。

それが今日、改めてよくわかった。


次回・第2話「娘が選んだ旅先は、まさかの温泉地!足腰に優しく、心にしみる”親孝行の湯”へ。」につづく……🌸


📝 読者の皆さんへ 年齢を重ねることを、時に寂しく感じることもあるかもしれません。でも——愛する家族が笑いながら隣にいてくれる日々は、長く生きてきたからこそ手にできた、かけがえのない宝物だと思っています。また次回も、お付き合いください。